漢方で考える春の養生

新緑


春は、植物が芽を出し、動物が冬眠から目覚めるなど、自然界が新しい命を育む季節です。
これからの時期は、冬の間にためこんだ老廃物を発散させ、滞った気を巡らせていきましょう。

季節に合わせた養生をおこなうことにより、健やかで充実した日々を送ることができます。
今回は、春の特徴とそれに合わせた食事や過ごし方について紹介いたします。

春に不調が起こる原因とは

風邪気味の女性


春は風邪(ふうじゃ)五臓の肝(かん)に注意をすることが必要です。
それぞれ次のような特徴があります。

風邪(ふうじゃ)

春は「風」の影響を受けやすい季節です。
これを風邪(ふうじゃ)といい、体内の中を風のように動き回ったり、急に現れたりする邪気(じゃき)のことをいいます。

風邪は軽くて動きやすいという特徴があり、風邪が体に侵入すると、突然関節痛や頭痛などを引き起こすことがあります。
また、風邪は他の邪気と結びつきやすいため、寒気・熱・湿気などと一緒に体内に侵入し、さまざまな不調を引き起こす場合があります。春に起こりやすい症状には、くしゃみ・鼻水・のどの痛みなどがあります。

これらの原因は、皮膚や鼻の粘膜を守る免疫機能の低下が関係をしており、
漢方では体の外部刺激から身を守るバリア機能「衛気(えき)」が不足すると邪気が体内に侵入しやすくなると考えています。
体の外から邪気が入らないように衛気を強化することが大切です。

五臓の肝

漢方で考える五臓の肝は西洋医学で考える肝臓とは意味が異なります。
漢方で考える肝は血を貯蔵し、気の流れをコントロールする働きがあります。

肝とは、五臓(肝・脾・心・肺・腎)の一部であり、生命活動をつかさどる重要なシステムのひとつです。
肝の機能が整っていると、血行がよくなり、気分が安定し、ストレスに強くなると考えられています。

しかし、春は肝のエネルギーが過剰になりやすい季節です。
特に春は、卒業式・入学式・入社式・転勤などさまざまなイベントがあります。
ストレスやイライラ、不眠、肩こりなどの症状が起こりやすいので注意しましょう。

また、肝の機能が衰えると目が疲れやすくなったり、筋肉がこわばります。
春は疲れがたまりやすい時期なので、適度に休憩をとることも大切です。

春を快適に過ごすための養生ポイント

春野菜

春は、肝の働きを整え、気(エネルギー)の流れをスムーズにすることが重要です。
春は次のポイントを意識しましょう。

1. ウォーキングやストレッチなどで気の流れをよくする

春は、体の中の気のエネルギーを発散させることが効果的です。
ウォーキングやストレッチ、ヨガなどがおすすめです。
軽めの運動で体を動かすことにより気の滞り(ストレスなど)を解消できます。

2. 旬の食材を積極的にとる

春は、肝の働きを助ける食材や、気の流れを整える食材を取りましょう。
ストレスを解消したり、体に不要な老廃物を排出したりすることができます。

✔︎ 肝の働きを助ける:青(緑色)の食材:ほうれん草、春菊、小松菜など

✔︎ 気の流れをよくする:酸味のある食材:梅干し、レモン、酢

✔︎ 気の流れをよくする:香りの良い食材:シソ、パクチー、ミント

✔︎ 老廃物を排出する:旬の食材:菜の花、アスパラガス、玉ねぎ

3. 酸味の食材は控える

春は冬の間にたまった老廃物を外に出すことが大切です。
酸味のある食材は、体から出る老廃物を抑える働きがあります。
ストレスが溜まっている人には酸味の食材は適していますが、摂りすぎに注意しましょう。

4. 感情をコントロールする

肝は感情と密接に関わっています。
ストレスを感じたときは、深呼吸や瞑想を行いましょう。リラックスすることが大切です。
また、自然の中を散歩することもおすすめです。
イライラしたときは、深呼吸をしましょう。体の中の気の巡りが良くなります。

5. 朝は早く起きて太陽の光を浴びる

漢方の古い書物によると、朝は早く起きて太陽の光を浴びることが大切だと書かれています。
太陽の光を浴びると体中のエネルギーが高まり、やる気がみなぎってきます。
朝起きたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びましょう。

春のおすすめ薬膳レシピ

春野菜をふんだんに使ったレシピです。肝を整える作用があるため、春の養生にもピッタリです。

春野菜と鶏むね肉を使ったさっぱり炒め

【材料】(2人分)
・鶏むね肉:250g
・菜の花:100g
・新玉ねぎ:半分
・ショウガ:1かけ
・ごま油:適量

【調味料】
・醤油:小さじ2
・酢:小さじ1
・塩:小さじ1/4
・片栗粉:大さじ2

【作り方】
1:鶏むね肉を薄切りにし、塩と片栗粉を軽くまぶす。
2:ごま油を入れ、ショウガを炒める。
3:鶏むね肉を加えて炒める。色が変わったら取り出す。
4:新玉ねぎと菜の花を軽く炒める。
5:野菜に炒めた鶏肉を入れ、醤油と酢で味を整える。

まとめ

春は生命力が満ちあふれ、自然と共に私たちも新しいエネルギーを感じやすい季節です。
しかし、この時期は肝が負担を抱えやすく、体と心のバランスを崩しがちです。

漢方薬膳の知恵を日常に取り入れることで、春をより健やかに、前向きに過ごすことができると良いですね。
ぜひ、これからの季節の参考になさってみてください。